映画『血と骨』の感想レビュー

梁石日原作、崔洋一監督の映画です。 1930年の大阪を舞台に、暴力的で破天荒な在日朝鮮人、金俊平の生涯をビートたけしが演じています。 自分勝手で周りを巻き込んでいく金俊平は、極道までもが一目置く人物。 金に汚く、女を性のはけ口としか見ていません。 見ていて、ゾッとするくらい冷酷で凶暴です。 その金俊平の人生の後半を描いたのがこの『血と骨』です。

 

金俊平は思いつきでカマボコ工場を経営しますが、費用その他の雑務はみんな妻任せ。 妻の英姫役は鈴木京香が演じています。 金俊平に怯え、憎みながらも、彼の愛人に嫉妬する英姫の微妙な気持ちを、細やかな演技力で表現しています。 愛人に嫉妬するのは、その愛情ゆえではなく、金俊平が自宅には金を入れないのに対して、愛人には贅沢な暮らしをさせているのではないかという猜疑心が先に立っています。 それでも、家族を守ろうと必死になる英姫の母親らしさに同情してしまいます。

 

圧巻なのは、金俊平が故郷の済州島で強姦した人妻が産んだ子ども、朴武役のオダギリジョーと、ビートたけしとの雨の中の乱闘シーンです。 激しく、切なく、獰猛とした記憶に残る名シーンでした。 この長い映画の中で、オダギリジョーの出演時間は15分程度と短いのですが、彼はその演技を認められて、日本アカデミー賞の助演男優賞を受賞しています。 この場面を見るだけでも、この映画の価値があるとさえ思います。 父親に対する恨みや、自分を産んで自殺した母親に対する思慕が込められた魂の演技だと感じました。

 

人の一生を狂わせて、奔放に生きる金俊平の人生のラストは悲劇的なものでしたが、誰もそれに共鳴しないどころか罰が当たったことをほっとするような気持ちにさせられます。 それほど、嫌われ者に徹したビートたけしの演技力は、見事で賞賛に値するものです。